2024/06/12
『リグナイト超』「リガー座談会」レポート
こんにちは。
BACKBONEの福本です。
4月26日に約4年ぶりにオフラインでリアル開催しました『リグナイト超』の「リガー座談会」の当日の様子をお伝えします。「ライトニングトーク」につきましては、ボーンデジタル様の記事をご確認ください。
『リグナイト超』ライトニングトークレポート
リグナイト概要
第1回リグナイト『リガーアニメーター座談会その①』前編~議論結果~
第2回リグナイト『リガーアニメーター座談会その②』中編~議論結果~
第3回リグナイト『リガーアニメーター座談会その③』後編~議論結果~
第4回リグナイト『ゲームと映像のリグの違いその①』~議論結果~
第5回リグナイト『ゲームと映像のリグの違いその②』~議論結果~
第6回リグナイト『フェイシャルリグ ~リガーアニメーター座談会~』~議論結果~
第7回リグナイト『みんなで悩めば怖くない! ~骨打ち議論人型体編 その①~』~議論結果~
第8回リグナイト『みんなで悩めば怖くない!~骨打ち議論人型体編 その②~』~議論結果~
第9回リグナイト『みんなで悩めば怖くない!~骨打ち議論人型体編 その③~』~議論結果~
第10回リグナイト『みんなで悩めば怖くない! ~骨打ち議論人型体編 その④~』~議論結果~
第11回リグナイト『リガーモデラー座談会 ~その①~』~議論結果~ ※記事校正中
はじめに
今回はAutodesk様協賛のもと、ボーンデジタル様と共同で開催させていただきました。
前半は1時間半のライトニングトーク、中盤は40分の懇親会、後半は1時間半の座談会といった内容で進行しました。
※画像提供元:CGWORLD
自己紹介
前半:ライトニングトーク
中盤:懇親会
後半:リガー座談会
『リアルタイムアンケート』
リグナイトは全員参加型をテーマに開催しております。
この規模で全員で議論するのは難しいですが、参加された皆様が間接的でも議論に参加していると感じていただけるよう、今回はリアルタイムアンケートを導入してみました。予めこちらで用意しておいたアンケート内容(皆様の職種は?議論してほしい内容は?など)に対して、スマホアプリで回答を選択するとリアルタイムに投票結果が反映される仕組みです。
投票結果は常にモニターに表示しつつ、アンケートを取りながら、投票数の多かった内容から議論を進めるといった流れで座談会を進めました。下記はリアルタイムアンケートの一部になります。
<業種>
・ゲーム:50名(40%)
・アニメ:28名(22%)
・映像:23名(18%)
・学生:15名(12%)
・その他:10名(8%)
<職種>
・リガー:34名(28%)
・TA/TD:28名(23%)
・アニメーター:26名(21%)
・その他職種:13名(11%)
・ジェネラリスト:12名(10%)
・モデラー:10名(8%)
<座談会テーマ一覧> ※「新しい技術や注目している事」の議論が終えた時点での投票数
・フェイシャルリグで使用している仕組みや課題:21%
・揺れ物の対応:17%
・アニメ、映画、ゲームでのリグの違い:14%
・アセットの大量生産時に工夫している事や効率化の仕組み、リグの工数:11%
・モデラー、アニメーターとのやり取りの内容や頻度:9%
・リグで一番難しいと感じること、困っていること:8%
・リガーの教育方法、またSVに育てるまでにかかる年数など:6%
・使用しているリグシステム:6%
・参加者からの質疑応答(発言方式):3%
・ライトニングトークの内容についての質疑応答(発言方式):2%
・新しい技術や注目している事(AIの取り組みなど):1%
・リガーを志す学生さんにアドバイス (登壇者がリグのスキルを磨くためにやってきた事、経験談):最後のテーマとして固定
『リガー座談会』
『新しい技術や注目していること(AIにかかわる取り組みなど)』
〘Bifrostについて〙
《小森氏》
Bifrost、特に組んだものをシーンに組み込んだ際の処理速度が気になっている。
《赤木氏》
処理速度は特に問題に感じていないがメンテナンスなどが難しいと考えている。Bifrost自体のバージョンが上がると以前作成したものがそのまま使用できなかったりするので、そこの管理が難しい。またJSONでの書き出しはできるがUEなどに出力することができない。リグを全てBifrostで組むのではなく部分的に使用するのであれば、個人的にはBifrostではなくプラグイン化した方が良い気がしている。どちらかというと作業中に例えばめり込みの確認のためとしてBifrostを使用するのは有効だと考えている。
〘AIについて〙
《山本氏》
アニメでどう使用されていくのか気になっている。
《金子氏》
アウトプットされた映像に対してどうAIを使用していくのかを考えているが、まだまだ形にはなっていない。
《小森氏》
今はまだAIに全てを任せることができなく、人間がディレクションする必要があるように思う。指示したことに対して成果を出力するというのが今の事情だと思う。部下に指示している、教育している内容をAIに学習させ、ジョイントなどをいい感じに設定してくれるAIというのが今後ありえそう。指示した内容からジョイントを作成したり、コントローラを作成したり、スキンウェイトを頑張って綺麗にしてくれるような何か凄いAIが欲しい。
《福本》
個人的に、スキンウェイトをすべてAIの自動化に任せるといったフローには賛同していない。高速化できるというのは良いがアニメ独特の表現やシルエット、大量生産の仕組みなどを考えた際にAIで全てが完結するとは思えない。特殊演出などは職人的な技術が必要だと思うので、両立は考えても完全に自動化するのはどうなんだろうと感じる。
《本村氏》
自動でジョイントを設定したりスキンウェイトを設定してくれることができたら良い。手作業の場合は意図したとおりに動くのかを重視しているため、この表現のためにこのスキンウェイトを設定しているというのが結構ある。AIに自動化してもらいその後に手直しする手間が発生するなら、AIはあまり必要ではない。そこが壁としてあり、超えられたら実用すると思う。
『リガーの教育方法、またSVに育てるまでにかかる年数など』
〘入社してから何ヵ月くらいをトレーニング期間として用意して、どのような教育をしていますか〙
《金子氏》
人型だとある程度分かりやすくデータを比べることができるため、期間を1ヵ月取り人型のリグを1体組んでもらう。1ヵ月でジョイントの設定、スキンウェイト、補助骨の設定、コントローラの作成を経験してもらう。その他にeSTの規格に合わせつつ骨打ちなどは自分で行ってもらい、プロップにリグを設定してもらうなどもある。主に対応力やスキンウェイトがどれくらい振れるのかを確認している。
SVまでの道のりに関してはまずは標準工数でリグ作業を行えるところを目指してもらうが、bodyの設定以外に髪の毛やフェイシャルの技術も必要になるため時間がかかる。そのために、フェイシャルだけの期間やbodyだけの期間、衣装だけの期間などを設けて計画的に進めている。
次第に標準工数で作業ができるようになってくるので、この案件でこういう風にやっていきたいというのが出てきた人達に先輩SVのサブSVを経験してもらい、次の案件では取り替えて経験してもらう。
ノードをたどれるようになったら、社内にはリグデータが沢山あるので設定してほしいリグに似た構造のデータから自分で読み取り使いやすいように設定してもらうよう指示を出している。リグデータを解析し、アニメーターからの意見などを踏まえて設定できるようになれば一人前みたいなところは少しある。
《赤木氏》
リグの基本を学ぶためにシリンダーに骨を入れて機能を追加する方法を教える。現場にすぐに入れて、求められていることができるリグを一回組むことを経験してもらい少しずつ教えていく。トレーニングだけでは難しいため、実際の仕事をしながらスキルを磨いてもらう。徒弟制にはしていない。小規模なプロジェクトのSVから始めて経験を積ませる。自分ではSVというのは、仕様が綺麗であったり、他のチームとのコミュニケーションが円滑であったり、リグに関することを相談すればそこで仕様を決められる人と考えている。なので大体3年くらいは掛かると考えている。
《山本氏》
リガー専門の部署はなく、アセットチーム内でモデラーとリギングを行える人で分かれている。数年前まではリグに対して意欲のある人にのみ案件内の簡単なプロップのリギングから教育を行っていた。最近は研修課題にリグの要項ができ、実践的なトレーニングとしてプロップやモブのリギングから教育している。リギングの研修期間は2週間ほど設けているが、これからは期間も伸ばしていくかもしれない。
《福本》
スキンウェイトや補助骨は教育がしやすいと思うが、コントローラはロジックや構造の説明が必要なため教える時間がかかる。
〘新人をどのくらいの期間、何人月として計算していますか〙
《金子氏》
新人を入社した年の8月から1人月として換算してプロジェクトに参加させたところ大変だったようなので、4、5ヵ月後に1人月として換算するのは早そう。
《本村氏》
新卒なのか他職種を経験する新人なのかで多少変わるが、半年くらいの期間は1人月として換算しない。
〘どのような人がリガーに向いているか〙
《福本》
自分の場合は、アニメーションをつけるために自分でリグを組んで自分の思うアニメーションをつけたいというところから始まっている。几帳面な人は、データ内の名前が統一されていたり、ジョイントが整理されていたりとデータやリグなどが綺麗だったりする。
《金子氏》
面倒くさがりが良いリガーになるというのはあるかもしれない。ツールを作るのが好きな人がいつの間にかというのもある。
《小森氏》
面倒くさいから仕事を減らすために効率化してツールを作成していく人はリガーやテクニカルになる人が多い印象。そういう人達は次第に頼られたり相談窓口になっていくことが多いと思う。
『アセットの大量生産時に工夫していることや効率化の仕組み、リグの工数』
〘ピッカーは誰が用意していますか〙
アンケート結果
リガー:52%(49票)
アニメーター:32%(30票)
その他:16%(15票)
《小森氏》
アニメーターが自分たちの使いやすい配置のピッカーを作成することが多い。使いやすいようにリグの機能を当てはめてくれるため、あまりリガーは関与していない。IKFKのマッチ機能やポーズのミラーなどの補助機能は別のツールとして用意している。
《本村氏》
アニメーターが作成。
《金子氏》
必要な場合はリガーが用意したりする。eSTではPythonなどの知識が無くても簡単にボタンを配置したりまとめて選択したりができる。リガー側で作業時間に余裕がある場合はプロップや髪の毛などもピッカーに用意する。無い場合はツールで作成されたものをそのままアニメーターに渡すこともあるが使用しづらいと言われることもある。
《山本氏》
ボディリグに関してはBipedベースなのでBipedのセレクターを使用している。フェイシャルリグに関してはシーン内にインスタンス接続されたフェイシャルUIを配置しているので、ピッカーの用意はあまりしない。
《福本》
リガーが足りていない上に工数もかかるので、可能であればアニメーターに用意していただきたい。
〘スキンウェイトをどのように流用しているのか〙
《福本》
トポロジーを同じにした補助モデルを利用してスキンウェイトの精度を最大限に利用したい。指の設定を一つ一つ行うと左指だけで1日かかることもあるため、指は100%使いまわす。
ジョイントとジオメトリーの相対位置がずれるとスキンウェイトが破綻するため、プロポーションを調節するためのリグを作成している。モデラーにはそのリグでプロポーションを調節してもらいそれを元にジョイントを設定して補助骨も自動化している。
《小森氏》
共通トポロジーのジオメトリーを男女でそれぞれ作成して使用する。
おじいさんから妖怪のような風貌の女性、モンスター体形などばらつきが出ると共通トポロジーのモデルの流用が難しい。そういう場合はモデラーの方に、一旦、無理を承知で共通トポロジーのモデルで作成して頂き、それをケージモデルとして使用する。
〘フェイシャルに関してはどうですか〙
《金子氏》
UVを合わせて流用できるようにしたりもしている。ジョイントとターゲットモデルを併用した仕組みを使用しており、アニメーターはどちらも使用してアニメーションを作成している。
《本村氏》
キャラクター特有のデザインが多いため、モデルのトポロジーを合わすことができない。フェイシャルはブレンドシェイプを使用せずにジョイントベースで作成している。映画や漫画のような表現は骨の配置やスキニングで工夫をし、作りたい表情が作れるようにしている。その他には、口の端に影パーツなど追加の表情パーツをたくさん用意して雰囲気を出している。これらはデザイン的に共通化しづらいので、キャラごとに手動で配置している。
《小森氏》
メタヒューマンなどは使用せずにブレンドシェイプをベースとして設定している。カットに応じた欲しい表情をモデラーに作成して頂くこともできる。
〘ブレンドシェイプで使用するターゲットモデルは誰が作成していますか〙
《小森氏》
全てモデラーに作成して頂く。
《金子氏》
基本的にはモデラーが作成しているが、過去にはリガーの方で作成したこともある。モデルの精度がそのまま映像のクオリティにつながるため難しい。
《山本氏》
表情作りに力のあるアニメーションのディレクターが作成することが多い。モデラーやリガーが作成することもある。
『学生にむけて』
〘どのようにしてそのスキル身につけましたか〙
《小森氏》
CGが趣味で、何か作成し動かそうとした時にリグが必要と思い勉強をするようになりました。もっと良いアニメーションをつけるためにリグをどうやって設定していくか、面白いリグは無いかを考えています。何回も同じものを作成していると量産化について考えるようになり、ワークフローやプラットフォーム的なツールを作成していました。転職してから専属のリガーとして働く中で先輩や上司の方から知識を得たり、会社のリグシステムを自分の趣味の中でどのように再現していくか勉強したりしていました。高度な制御のためには数学が必要なのでベクトルや行列などを再度勉強していました。
《本村氏》
大学時代からキャラクターモデルを作りたいと思っていて、そのモデルにポーズをつけたいというところから入りました。始めはジョイントを設定しFKで動かしていたが、ポーズをつけるのが難しく、欲しいポーズをつけられるように色々やっていたらいつの間にか仕事になっていました。自分のプライベートな時間で培ったスキルを仕事に生かしています。
《金子氏》
アニメーション志望で入社したが、社内のリグに触れているうちにリグを勉強するようになりました。弊社には10名前後のリガーがおり教えるのが上手な人やダメな点を教えてくれる人達に育てられました。今でもアニメーターの方に意見を求めたりして人との繋がりの中で成長しています。新人には仕事で大変な箇所を確認したりノウハウを共有しスキルを伸ばしてもらっています。
《山本氏》
会社にリグをメインで作業している人が少なかったので、モデル作業もしつつ徐々にリガーになっていきました。初めは他の方が公開しているリギングチュートリアルなどで勉強し、やりたいことに対して分からない事があればすぐに調べるようにしていました。リギングは引き出しだと思っているので、分からないことをすぐに調べることは今でも心掛けています。
《赤木氏》
始めはアニメーターになるためにリグを勉強しようとし無料のリグのシステムを解析して自分で再現していました。リガ―として入社後は、自分が興味がある事からスタートするようにして、調べる時間を確保していました。モチベーションも上がるので、そうする事で他の仕事に対してもいい影響がありました。プライベートな時間をリグの勉強に割くことはあまりしていませんでした。仕事が終わらなくて、帰りの電車の中でスクリプトを書いていたこともありましたがw。外国の情報にも触れると情報量が多いので良いと思います。
《福本》
新卒で入社後にリグを教えてくれた上司が8ヵ月ほどで退社されたため、独学で学んで対応するしかないといった状況でした。上司が作成していたスクリプトをそのまま使用していましたが、中身が解読できないのでエラーが出たら終わりといった状態が数年続きました。一つ一つ目標を掲げて少しずつクリアしていきましたが、ほぼ独学で進めていたので答えを求めてポリゴン・ピクチュアズに転職を決意しました。ポリゴン・ピクチュアズではeSTといった素晴らしいリグシステムがあり、求めていた答えが全てありました。過去案件で制作された数千のプロップリグのデータから勉強になりそうなリグを一つ一つ確認し、最終的には約300個のプロップリグを業務終了後に約半年かけて1つずつ解析して知識を増やしていきました。
BACKBONEを立ち上げる際には、自己分析を行って苦手な個所やスキルが足りない箇所をリスト化して付箋に書いて壁に貼り、4ヵ月かけて勉強し直しました。気になるリグや機能は、できるまでとことんやって悩んで悩んで必ず突破する、といった事を繰り返し行ってきました。たくさんのリグを見て、悩みながらも何とか乗り越えてきたからこそ今があると感じています。
おわりに
登壇者含めて160人規模での開催は初の試みでしたので、これまでのリグナイトの雰囲気をどのようにして再現するかが大きな課題でしたが、ライトニングトークやリアルタイムアンケートの導入などで何とかいつも通りのリグナイトを再現できたかなと感じています。
ご応募いただいたすべての方にご参加いただきたかったのですが、想定よりも多くの方からご応募をいただき、抽選により多くの落選者が出てしまいました。当日ご参加いただけなかった皆様には心よりお詫び申し上げます。本当にすみません。。。毎回オフラインでリアル開催する事は難しいですが、オンラインでのリグナイトは定期的に開催しておりますので今後もご応募、ご参加いただけますと幸いです。そして視聴枠ではなく、ぜひ登壇枠で一緒にお話ししましょう!
次のリグナイトの開催は10月下旬ごろに予定しております。eST3がリリースされたということで、次回のテーマは『eST座談会』を考えています。eST経験者の方を交えて、便利な機能や使用例、質疑応答などで盛り上がればと思います。(オフラインまたはオンライン、どちらで開催するかはまだ未定です。)開催の告知につきましては、私のX(@kentaLOW12345)とBACKBONEのウェブサイトにて告知しますので、たまにサイトを見ていただけると嬉しいです。
最後になりましたが、今回の開催にあたりご協力いただきましたボーンデジタルの皆様、Autodeskの皆様、登壇者の皆様、ご参加・ご応募いただきました皆様、弊社運営スタッフ、関係者の皆様に心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。
ではまた。
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