2021/01/30

第5回リグナイト『ゲームと映像のリグの違いその②』~議論結果~

ご無沙汰しております。
BACKBONEの福本です。

今回は、
第5回リグナイト『ゲームと映像のリグの違いその②)』
の当日の様子をお伝えします。

リグナイトに関してはこちら。
リグナイト概要
第1回リグナイト『リガーアニメーター座談会その①』前編~議論結果~

第2回リグナイト『リガーアニメーター座談会その②』中編~議論結果~
第3回リグナイト『リガーアニメーター座談会その③』後編~議論結果~
第4回リグナイト『ゲームと映像のリグの違いその①』~議論結果~

 

今回ご参加いただきました会社様、リガーさんの数は下記となります。
初のZoomでのオンライン開催ということもあり、関西や海外からも多数ご参加いただきました。

  • 映像関連   : 11社
  • ゲーム関連  :  9社
  • フリーランス :  4名
  • 学生     :  2名
  • 計      : 20社 + 学生2
  • 招待枠    : 12
  • 応募枠    : 16名
  • 計      : 28名

※以下の議論内容は、各テーマの「解」ではなく、皆さまの経験談に基づく「ご意見」となります。

 

前半 『ジョイントの数、軸、位置、補助骨の仕様』

〘ジョイントの主軸(Primary Axis 子階層の骨に向く軸)を
 X軸方向で統一するのは一般的ですか?〙

<ゲーム><映像>

  • X軸で統一している。(多数)。
  • MayaではsplineIKのadvanced twist機能でツイストを制御したいので
    X軸で統一している。Maya推奨?
  • rollとrotateXを合わせたいのでX軸で統一している。
  • mGearでは自動的にY軸で設定される。
  • mGearを使用しているのでY軸で統一している。
  • 確かBlenderの推奨がY軸。
  • 他社さんとは軸の規格が合わないことが多いので苦労している。
  • 外注さんから、操作しにくいというご意見をいただく事があるので、
    軸を変えるツールを使用して柔軟に対応している。
  • Y軸を主軸にするとジンバルロックが発生しやすかったので、
    RotateOrderで変更できるように設定している。
  • 海外でもアニメーターさんはジンバルロックを嫌うので、
    ジンバルロックを回避するためorbit軸という4軸目を使用している(自社開発)。
  • デフォームに使用する骨とコントローラーの軸を、
    用途によって変更できるように開発している。
  • 特にコントローラーの軸はアニメーターさんに意見を聞いた上で、
    アニメーションしやすい軸に設定している。
  • world軸(Translate値)で配置している。SIの名残。

X軸で統一されている会社様が多かったですが、
使用されているリグツールに依存することも多く、各社様それぞれの設定があるようです。

アニメーターさんはグラフエディターを多用されるので、
コントローラーは使い慣れた軸が好まれる、というご意見も多かったです。

UnityやUnrealなどエンジン側での設定も考慮する必要があるので、
用途によって柔軟に対応できるシステムがよさそうですね。

海外のorbit軸の4軸はとても興味深い。

 

〘ジョイントの補助軸(Secondary Axis 垂直方向に向く軸)については?〙

<ゲーム><映像>

  • とても悩ましい。(多数)
  • 背骨と腕で軸を変えている。
  • よく曲がる方向をZ軸に設定している。
  • よく曲がる方向をY軸に設定している。
  • よく曲がる方向の値が+値になるように設定している。
  • Primary AxisがX軸で設定されていればどちらでもよいが、統一はする。
  • それぞれの宗教がありそう。
  • Rotate Orderの設定が重要。

色々な考え方がありますが、アニメーターさんと相談の上、
定義をしっかりと決めることが重要かと思います。
エンジン出力の際はプログラマーさんとも相談する必要がありそうですね。

 

〘補助骨はどのように制御していますか?〙

<ゲーム>

  • エンジンでランタイム処理するプラグインを自社開発している。
    Mayaでも同様のプラグインを使用している。
  • 一部RBF(Radial Basis Function)で制御しているが、
    処理負荷の問題で多用はできていない。
  • ドリブンキーで制御している。
    エンジン出力の際はアニメーションキーをベイクして出力している。
  • 骨とスキニングまではモデラーさん、
    補助骨のシステム開発はプログラマーさんが担当しているので、
    リガーが決める余地がない。

 

<映像>

  • ドリブンキーで制御していたが、最近はRBFを使用して制御している。
  • 肩や上腕など特定のポーズで制御したい箇所のみRBFを使用している。
  • RBFにはフリープラグインのweightDriverを使用している。
  • RBFはポーズ間のブレンドが意図通りに設定できないときがあるので、
    カスタマイズすることがある。
  • 自社のリグシステムで補助骨は一切使っていない。
    カーブの曲がり具合でデフォームを制御している。(海外)

 

<ゲーム><映像>

  • クォータニオンに変換した値をドライバーにしてドリブンキーで制御している。
  • 1軸のみの制御の箇所はオイラー値をそのままドライバーにすることもある。
  • OrientConstraint、AimConstraintなどを使用して補助骨を自動制御している。

弊社も最近はRBFを多用していますが、
リミットを設定できるように改良すると、意図しない挙動を回避できて使い勝手がよくなります。

 

この他にも、

  • Mayaのjoint orient値のゲームエンジンでの扱い方
  • 左右の軸の設定
  • フェイシャルでのRBFの使用事例

など様々な議論が行われました。

 

休憩 『雑談』

mGearに関する内容で雑談されていました。

 

後半 『映像系とゲーム系のチェックフローについて』

〘リグデータはどのようにチェックしていますか?〙

<ゲーム><映像>

  • キャラクターを回転して逆さまにしてチェックする。
    エラーが大量に発生するので分かりやすい。
  • 軸の向きなどのチェックリストを作成して細かくチェックしている。
  • 自動でチェックできる内容については、
    チェックツールを作成して自動で検出している。
  • 更新するバージョンによって差がないよう、
    それぞれでアニメーションを書き出して比較している。
  • アニメーターさんからサンプルのアニメーションをもらって確認している。
  • アニメーターさんから提供されたチェック用のポーズで確認している。
  • 全コントローラを機械的に動かす体操モーションで確認しているが、
    アニメーターさんは可動域以上に動かすことが多いので
    チェック効力が低い。
  • 全部位を動かして細かくチェックしている。時間はかかるが一番精度が高い。
  • デフォームなどのチェックは目で確認するのが一番精度が高い。
  • リグリーダーがデータ、アニメーターさんが挙動と使用感、
    ディレクターさんがルックをチェックしている。
  • アニメーターさんが作成してくれたチェック用のアニメーションが、
    2000フレームあってビックリした。
  • モジュールリグを作成する際に、
    チェックアニメーションも自動で作成されて確認できるようにしている。
  • モジュールを作成する際にFPSもチェックしている。
  • 一部を修正しても他で壊れたりするのが悩ましい。
  • ローカルセットアップとワールドセットアップで別々のチェックが必要だった。

弊社ではリグを設定する際に
先ずは左側で設定してから右側の処理をすることが多いですが、
最終的なデフォームは右側でチェックを行います。
右側への反転漏れなどのエラーが確認できるのでお勧めです。

コントローラーをロケーターにコンストレインするとサイクルが発生することもあるので、
色んなケースを想定したチェックが必要ですね。

 

この他にも議題とは脱線しましたが、

  • Blender
  • エッジの割り方
  • 学生の就活事情
  • ngスキンツール

など様々な議論が行われました。

 

『フリータイム』

ご参加いただいた学生の方からご質問がありましたので、
議論枠の皆様にアドバイスをいただきました。

〘リグのデモリールの見せ方について教えて下さい。どのように差別化すればよいでしょうか?〙

<デモリール動画について>

  • よくあるデモリール動画では、コントローラーを高速で動かしていて判断ができない。
  • 動かす範囲が狭すぎて判断ができない。
  • もっと深くゆっくり動かして、フリップしていないかなどを確認したい。
  • リグのデータを送ってもらえると判断しやすい。
    保存期間の決まっているアップローダよりは、
    データの消えないストレージサービスだと嬉しい。
  • リグのデモリールといえど、しっかりとしたアニメーションが
    ついている方が印象がよい。
  • 単純な部位の開閉など、意味のない動きをしているデモリールも多いが
    目を引きにくい。

 

<アプローチについて>

  • IKFKの切り替えなど人型のコントローラーはどれも似たり寄ったりで、
    個性のないものは判断し辛い。
  • 人型のリグのデモリールより、当人の趣味が出ているような、
    特殊なプロップなどを組んでいると面白いし評価できる。
  • リギングにおける問題解決の過程を知りたい。
    人型のリグは既に解決されている問題なので、できて当たり前と感じる。
  • 人型のリグのデモリールでも、きれいなデフォームが再現されているかを見たい。
  • アニメーション志望だったが、
    アニメーション用に作成したツールが評価されてリガーになったので、
    作成したツールも十分アピールになる。

 

<人柄について>

  • 技術に関しては入社後に教育するので、個人のスキルはさほど重要視していない。
    即戦力を期待しないようにしている。むしろ履歴書の趣味の欄を重視している。
    好奇心が強い人やおもしろい人が独自の発想でおもしろいリグが組める。
  • コミュニケーション能力は必須。
  • アニメーターさんの期待を理解し、期待を超えるサービス精神がほしい。
  • 技術に対して興味、好奇心、探求心を持ってほしい。

 

<その他>

  • (海外)多くの応募者がレジュメで落とされている。学歴で落とされることが多い。

 

この他にも、

  • コントローラー作成時に、階層構造で気を付けることはありますか?

など、学生さんからのご質問に対して、プロの目線で熱い回答が飛び交っておりました。

 

おわりに 

今回は初のオンラインでの開催でしたが、
皆様ご自宅からのご参加という事もあり、夜中12時過ぎまで約4時間の議論大会となりました。

今後は視聴のみのご参加も検討していますので、
ご興味のある方は、ぜひご参加下さい。

では。

 

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