2021/07/20

第7回リグナイト『みんなで悩めば怖くない! ~骨打ち議論人型体編 その①~』~議論結果~

こんにちは。
BACKBONEの福本です。

今回は、
第7回リグナイト『みんなで悩めば怖くない! ~骨打ち議論人型体編 その①~』
当日の様子をお伝えします。

リグナイトに関してはこちら。

リグナイト概要
第1回リグナイト『リガーアニメーター座談会その①』前編~議論結果~
第2回リグナイト『リガーアニメーター座談会その②』中編~議論結果~
第3回リグナイト『リガーアニメーター座談会その③』後編~議論結果~
第4回リグナイト『ゲームと映像のリグの違いその①』~議論結果~
第5回リグナイト『ゲームと映像のリグの違いその②』~議論結果~

第6回リグナイト『フェイシャルリグ ~リガーアニメーター座談会~』~議論結果~

 

今回も前回に引き続き、Zoomでのオンライン開催となりました。
ご参加いただきました会社様の数は下記となります。
海外からもリガーさん1名にご参加いただきました。

<議論枠>

  • 映像関連       : 8社
  • ゲーム関連      : 9社
  • フリーランス     : 1名
  • 学生         : 1名
  • 計          : 17社 + 学生1

 

<視聴枠>

  • 映像関連       : 9社
  • ゲーム関連      : 4社
  • フリーランス     : 2名
  • 学生         : 2名
  • 計          : 13社 + 学生2

<議論枠>

  • リガー(TA/TD含む)  : 15
  • アニメーター     :  1名
  • モデラー       :  2名
  • リガー兼アニメーター :  1名
  • リガー兼モデラー   :  1名
  • 計          : 20名

 

<視聴枠>

  • リガー(TA/TD含む)  : 13
  • アニメーター     :  1名
  • モデラー       :  1名
  • リガー兼アニメーター :  1名
  • リガー兼モデラー   :  1名
  • 計          : 17名

※以下の議論内容は、各テーマの「解」ではなく、皆さまの経験談に基づく「ご意見」となります。

 

前半 AポーズとTポーズ

〘初期ポーズは「A(腕を40~45度下げた)ポーズ」と「T(腕を水平に上げた)ポーズ」、
 どちらが良いでしょうか?〙

  • Aポーズが良い・・・7名
  • Tポーズが良い・・・9名

 

《 Aポーズについて 》

〈リガー〉

  • Aポーズの方が肩回りのデフォームを綺麗に設定できる。
  • Aポーズは腕に角度がついているので、腕の骨を斜めに設定する必要がある。
    肘の骨は1軸以外に値が入らないように注意が必要。
  • 鎧や甲冑を着ているキャラはAポーズの方が設定しやすい。
  • 以前はTポーズが多かったが、最近はゲームでもAポーズが増えてきた。


〈モデラー〉

  • Aポーズの方が圧倒的に作りやすい。
  • スカルプト作業はAポーズで行う。
  • 肩回りが作りやすい。
  • エッジループが複雑になるのでTポーズでモデリングしたい、という意見もある。
  • AポーズとTポーズでは皺の入り方が違う。
    Tポーズに合わせた皺をモデリングすると、修正箇所がとても多くなる。
    ゲームの待機モーションは腕を下している事が多いので、
    Aポーズで作成された皺の方が自然。
  • 特にフォトリアル系のアセットの場合、Tポーズでモデリングするのはとても辛い。


〈アニメーター〉

  • Aポーズの方が腕を下した時のポーズが決まると感じる時がある。
  • 正直、腕を上下したときに綺麗な形状になればどちらでも良い。

 

《 Tポーズについて 》

〈リガー〉

  • 腕に角度がついていないのでコントローラーが設定しやすい。
  • 骨打ちの際に位置を決めやすい。
    腕や足の開き、手の捻りが毎回違うと骨の位置や向きを決めるのが難しい。
  • Aポーズだとメッシュが密集している脇の下のモデリングやウェイトの調整が困難。
    特に筋肉が多いキャラは脇の下などがめり込むのでTポーズが良い。
  • 脇の下の形状の確認がしやすい。
    Aポーズだと腕を上げてバンザイポーズにして初めて脇の下の形状の破綻や
    詰めの甘さなどに気付くことが多く
    、チェック漏れが起こりやすい。
  • ポーズデフォーメーションで形を調整するので、変形量の少ないTポーズの方が楽。
  • 鎖骨は下がっているのに上腕だけが上がっているポーズは不自然。
    モデリングの際に鎖骨の角度も意識する必要がある。


〈モデラー〉

  • ポーズを取らせたときに綺麗な形状にならないのでAポーズが良い。
  • 鎧や甲冑を着ているキャラで肩のアーマーなどがある場合、
    リラックスポーズから腕を上げた時の形状を想定して
    肩のアーマーを肩に埋めて作成する必要があるのでとても作り辛い。


〈アニメーター〉

  • Tポーズは既に肩にポーズがついている感じがある。

正解はないと思いますが、Tポーズで作成する際は鎖骨の角度も意識して作成しないと、
モーションキャプチャーを撮影する際に「いかり肩」や「なで肩」になることがあるので、
注意が必要ですね。

 

〘Aポーズの場合、手首に配置した腕のIKコントローラーは、
 ローカル軸、ワールド軸どちらが良いでしょうか?〙

〈リガー〉

  • 移動と回転は別々のコントローラーで制御している。
    →アニメーターさんの要望で、移動はワールド軸、回転はローカル軸で設定している。
    ワールド軸とローカル軸、両方のコントローラーを設定している。
  • 移動と回転は1つのコントローラーで制御している。
  • アニメーターさんの好みによるので設定する前に確認する。


〈アニメーター〉

  • ローカル軸がよい。
  • コントローラーが手の甲と同じ向きの方がアニメーションが付けやすい。
  • ワールド軸の場合、FKに切り替えた際に手の向きが変わるのが気持ち悪い。

設定前にアニメーターさんに確認するのがよさそうです。

 

〘AポーズとTポーズを使い分けてセットアップすることはありますか?

  • モデリングとバインドはAポーズで作業して、コントローラー設定はTポーズで行う。
  • モデラーさんはAポーズで作業、リガーさんはTポーズで作業されている。
  • Tポーズでモデリングと骨打ちの作業を行う。
    その際、Aポーズにしたときに綺麗な形状になるかをチェックしながら、
    モデルの修正と骨の位置調整を行う。
  • ポーズが付いた状態でモデルを作成して、モデルのOKが出たらTポーズで作成し直す。
    リグ設定後はOKが出たポーズの形状が再現されているかチェックを行う。
    どうしても上手く出来ない場合は、
    モデルのデザインの変更や腕、足の長さのバランスを変えたりもする。

初期ポーズで足が「ハの字」に開いている場合は、

  • 足が真っすぐ地面に接地するようにモデリングでポーズの修正を依頼する
  • バインドは「ハの字」のまま行いコントローラー作成時に真っすぐに変更する

といったご意見もありました。

 

前半は上記の議題の他にも、

  • 足首のTwist骨の設定について
  • JointOrientとRotateの扱い方
  • 特殊なポーズでの対応方法

について議論しました。

 

後半 『補助骨の有無による設定の違い』

〘ゲーム業界における処理負荷を考慮した補助骨について

  • スマートフォン向けのゲームでは、使用できる補助骨の数が限られている。
    補助骨なしでも曲げたときに形状が痩せすぎないよう、
    膝の骨は中心ではなく前側に配置している。
    後ろ側は頂点やエッジを削減して凹みが目立たないように工夫している。
  • ハイエンド向けのゲームでは、補助骨を使うことを前提に、
    骨は形状の中心に配置している。
  • VTuberモデルでは服に骨を多く使いたいので、
    体にはあまり骨を設定しないようにしていた。
  • スマートフォン向けのゲームでは、
    補助骨なしやMaxインフルエンスの制限が「2」の場合がある。
  • スマートフォン向けのゲームでも肘や膝には補助骨を設定していた。

案件によるといったご意見も多かったですが、
Maxインフルエンスの制限「2」はキツイですね。。。

 

〘ゲーム業界におけるリグ作業の分担について

〈リガー〉

  • ゲーム業界ではモデラーさんが補助骨を設定していた。
  • モデラーさんから提出された骨は必ず確認する。
    修正があればモデラーさんに戻す。
  • モデラーさんから提出された骨で修正がある場合は、
    リガーが修正してモデラーさんに戻す。
  • 骨の位置や軸はモデラーさんとアニメーターさんとで話し合って決めてもらうが、
    最終的にはリガーが修正することになるケースが多い。
  • モーション直前までの工程
    (モデリング、骨打ち、ウェイト調整、コントローラー作成)は、
    モデラーさんが担当している。
    リガーは一体目のベースとなるリグを作成するのみ。
    ベースのリグをもとにモデラーさんが他のアセットのリグを作成する。


〈モデラー〉

  • モデラー側で設定した骨をリガーさんの判断で直してもらっても問題ない。
    ただし以前、
    女性キャラの肘の逆反りを意識して配置した骨が直されていたことがあり、
    少し不満に感じた。

骨は「位置」と「軸」の両方を確認する必要があるので必ずリガーが確認する、
修正がある場合はリガー側で修正する、といったご意見が多かったです。

この内容については、今後予定している
『モデラーリガー座談会』で掘り下げて議論出来ればと思います。

 

上記の議題の他にも、

  • 膝や肘の二重関節
  • 逆関節

について議論しました。

 

『骨打ちの実演』

ここからはMayaの画面を共有しながら、Mayaでの実践を交えて骨の位置について議論しました。
 

 

〘Root骨と腰骨の関係性

下記の2パターンがある。

    1. 腰骨のPelvisを一番親に設定する。
      この場合はPelvis骨を制御すると体全体が動く。
    2. 腰骨のPelvisの親にRoot骨(HipやBodyと命名している)を設定する。
      この場合はRoot骨を制御すると体全体が動き、
      Pelvis骨を制御すると下半身全体が動く。
      ※Pelvisのコントローラーを制御した際は腰のみが動くように設定する。

何れのパターンも、骨盤のみを制御できるコントローラーは必要との事です。

 

〘腰骨の位置

〈正面〉

 

〈横〉

 

  • 男性と女性で位置が異なる。
  • 尾骶骨の位置や形状を基準に判断する。
  • 骨盤の出っ張っている骨を基準にして高さを決める。
  • へその位置より少し下側に配置している。
    女性は少し高めの位置に配置している。
  • 大腿骨と同じ高さの位置に配置している。
  • 大腿骨より少し上側に配置している。
  • Twistしたときの背骨の動きを考えて、少し背骨側に配置している。

軸についての議論ができなかったので、次回に議論したいと思います。

 

〘腰骨と大腿骨の関係について

腰骨を大腿骨より上側に配置した場合、腰を前後に回転させると
腰の動きが下半身に影響して、膝が連動して動きます。

 

腰骨を大腿骨と同じ高さ、横から見て同じ位置に配置した場合、
腰を前後に回転させると腰の動きは下半身に影響せず、膝が固定されます。

 

アニメーターさんの好みはどちらでしょうか?

〈アニメーター〉

  • 体を前傾に動かすとどちらにしろ重心は動くことになるので、
    下半身が動いても問題ない。
  • 確かに下半身が動くのが嫌だという意見はよく耳にする。
  • 海外では、
    ディレクターからOKが出ている箇所まで影響して動きが変わるのは避けたい、
    といった意見が多い。
  • 上半身は固定で骨盤のみを制御できる機能は欲しい。特に格闘系の作品では必須。
  • Pivotで位置を変更できるのがよい。


〈リガー〉

  • アニメーターさんから、
    上半身を動かすときは下半身は動いてほしくないと言われることが多い。
  • 3dsMaxのbipedの場合は、腰骨は大腿骨と同じ高さで固定される。
  • 後者の仕様で設定しているが、Pivotの位置を変更できるように設定している。
  • 骨の位置はどこに配置されていても問題なく、コントローラー側で吸収すればよい。

腰のコントローラーのPivotの位置を変更できるように設定するのがよさそうです。

 

〘大腿骨の位置

<正面>

 

<横>

  • お尻のシルエットが重要なので、
    お尻の形状に合わせてsphereを作成しsphereの中心に配置する。
    お尻の形状が
    sphereに合わない場合、モデラーさんに修正を依頼することもある。
  • 大腿骨の位置は、
    180度開脚したときや前後に90度曲げたときの形状を想像して配置する。

    股下の付け根から45度外側に上げたラインを引き、そのラインの中心に骨を配置すると
    開脚した際の脚の太さの変化や痩せをおさえることができる。

  • 正面から見て、大腿骨から足首にかけて真っすぐに骨を配置したいので、
    先ずは足首と大腿骨との位置関係を確認する。
  • 足首の骨の位置を決めてから大腿骨の位置を調整する。
    膝の骨は1軸以外に値が入らないように注意が必要。
  • 大腿骨と足首の位置を決めた後、膝の位置を調整する。
    正面から見て、膝の形状の中心に骨が配置できないことがあるが、
    膝は1軸で制御するので形状の中心から少しズレていても特に問題ない。

  • IK用の骨とは別に大腿骨の外側にバインド用の骨を設定し、
    横に曲げたときの凹みを抑えている。
    Twist用の骨はそのバインド用の骨から膝の骨に向けた直線上に配置している。
    甲冑を着ているキャラの案件が多いので、この仕様は少し特殊かもしれない。

  • Twist用の骨はIK用の骨の直線上に均等に配置している。

ここで時間切れになりましたので、次回はこの続きとなります。


上記の議題の他に、

  • ローライズやベルトの処理方法

について掘り下げて議論しました。

 

『フリータイム』

ご参加いただいた学生の方から、
作成したデモリールに意見がほしいとリクエストがありましたので
議論枠の皆様でデモリールを拝見しながらアドバイスをさせていただきました。

学生さんへのアドバイスの後は、

  • 海外のデモリール
  • リグの良し悪しを判断するポイント
  • フェイシャルリグのFPS
  • offsetParentMatrix

などの議題で議論されていました。

 

おわりに

今回は、骨に関する考え方などの議論が中心でしたが、
第8回リグナイト(7/21(水)開催)では、Mayaでの実践を交えながら
主に下半身(下腿、足首、爪先、足指)と上半身(背骨、首、頭)について
議論できればと思います。
https://backbone-studio.com/rignightv08/

ではまた。

 

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